「気候モデル」の手法を確立
スウェーデン王立科学アカデミーは10月5日、2021年のノーベル物理学賞をコンピューター上でシミュレーションを可能にする、「気候モデル」の手法を確立した米プリンストン大の真鍋淑郎上席研究員(90)に授与すると発表しました。
真鍋氏は1960年代から、大気と海洋の数値計算のモデルを結合。
多くの要素が複雑に絡み合う気候変動の仕組みについて研究を重ね、大気中の二酸化炭素の濃度上昇が、温暖化につながることを実証したのです。
今回はノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎上席研究員について調べてみようと思います。
真鍋氏にノーベル物理学賞 米国の自宅で笑顔
スウェーデンの王立科学アカデミーは5日、2021年のノーベル物理学賞を、真鍋淑郎・米プリンストン大上席研究員(90)=愛媛県出身、米国籍=ら3氏に授与すると発表。
真鍋氏は同日、米東部ニュージャージー州プリンストンの自宅で記者団の取材に応じた。
1996年に朝日賞を受賞
1996年に日本の朝日賞を受賞しましたが、「世界で最もよくスーパーコンピューターを使う男」とも呼ばれています。
「自然は無限に複雑。複雑さを競ったらスーパーコンピューターでも勝てない。それをいかに単純化するか、本質をどうつかまえるか。生け花のようなバランスが大事だ」と述べ、これらの研究に対し、「無駄を省いて、いかに美を追究するか。日本人に向いている仕事かもしれない」とも語っています。
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日本の現状について
米プリンストン大の真鍋淑郎上席研究員(90)が5日、同大で記者会見に臨み日本の現状について、こうも語っています。
「以前に比べて、好奇心からの研究が少なくなっている」と警鐘を鳴らし、教育や研究環境の改善を訴えています。さらに米国と比べて、科学界と政治家の関係が希薄だとし、両者の間で活発な対話を求めるよう促しています。
また別の報道機関からの取材に対し、「(治水などで)気候変動に適応することと、(温室効果ガス排出を抑えて)気候変動を小さくすること。その二つのバランスをどうとるかが大事な問題だと思う。いろんな選択があるんですよね。
国全体として何をするか、気候学者だけじゃなくエネルギー、水の問題をやっている人の意見を総合して、国の行動を決めると。それを考えるべきではないですかね」とも。
日本人のノーベル賞は合計28人目
日本人のノーベル賞は、2019年に吉野彰・旭化成名誉フェロー(73)が化学賞を受賞し、合計28人目(米国籍取得者を含む)となります。
また物理学賞は、2015年の梶田隆章・東京大宇宙線研究所長(62)以来となり、6年ぶり12人目です。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が90年に公表した第1次評価報告書には、真鍋氏の研究成果が引用されています。
真鍋淑郎氏の略歴
真鍋 淑郎氏(まなべ・しゅくろう)
1931年9月21日、愛媛県の現四国中央市出身。
1958年 東京大大学院で博士号取得
渡米し米海洋大気局上席研究官などを経て、米プリンストン大上席研究員に。
1975年 米国籍取得。
1992年 旭硝子財団のブループラネット賞受賞。
2018年 スウェーデンのクラフォード賞受賞。