1999年秋の東京モーターショーにおいて
90年代のヤマハの初代マジェスティとスズキのスカイウエーブに対し、ホンダはフュージョン・フォーサイトを世に送り出しながらも、販売台数では苦戦をしいられていました。
マジェスティとスカイウエーブは、ビッグスクーターの実用性に加え、運転時の快適性やスポーツ性も高めていったことで、若者に支持されていきます。
そして、1999年秋の東京モーターショーにおいて1台のバイクが参考出品されます。その名もForza。イタリア語ではfo_rza 「fortsa」と書き、日本名はフォルツァ。
参考出品ながら、フォルツァの顔つきは精悍そのもの。シャープな2眼ヘッドライトや、全体的に躍動感のあるフォルムは、バイク雑誌にも紹介されます。
これまでのマジェスティや、スカイウエーブとは違うデザイン性が話題を呼び、市販化を望む声が増えていくのです。
1999年10月フルモデルチェンジ
軽快でスポーティなルックスに加え、走りでも評価のあった初代マジェスティ。
そんな大人気のマジェスティが、1999年10月にフルモデルチェンジしました。開発コンセプトは、快適革新の4文字。
カタログにおいても、スポーティで高級感溢れるマジェスティの外観デザイン、それに新設計フレーム採用による剛性感及び走行性能の向上がしっかりと謳われています。
この2代目こそが、ビッグスクーターの人気を確たるものにしたと言っても過言ではありません。
各バイクメーカーは開発競争に凌ぎを削りつつも、市場に供給される魅力的なカスタムパーツ、それにバイク情報誌やネット等で取り上げられたビッグスクーターの特集などが、流行を後押ししていったのです。
主要諸元 | |
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ヤマハ | マジェスティ |
型式 | BA-SG03J |
排気量 (cc) | 249 |
最高出力(PS) | 22 |
最高出力回転数(rpm) | 7500 |
タイヤ(前) | 110/90-12 |
タイヤ(後) | 130/70-12 |
備考 | 右側のミラーは逆ネジのため、逆ネジタイプのミラー、または逆ネジアダプターを使用 |
マジェスティ人気を支えたC
通勤や通学、街中でもビッグスクーターとしてのマジェスティを頻繁に見かけるようになります。
中でも注目を集めていたのが、マジェスティC(カスタム)です。
これはマジェスティをベースモデルとし、5連ホワイトメーターやショートスクリーン、パイプハンドル及びメッキミラー、パンチングそしてパイピングされたシートを装備。
全体として非常にカスタム感があふれ、既存のバイクとは違う個性的なパーツを装備したモデルだったのです。
マジェスティ カスタムC
ストリートカジュアル・クールなどのキーワードをコンセプトとして、ベース車両にスモーククリア仕上げのマフラープロテクターやマフラーエンドキャップを装着。
それに上記の5連ホワイトメーターやショートスクリーン、パイプハンドル及びメッキミラー、パンチングやパイピングされたシートを装備した充実モデルとなっています。
迎撃体勢のホンダ
2000年春、ホンダはフォルツァMF06を発売します。
フォルツァの車体やエンジンは、先行販売をしていますフォーサイトがベースとなっていますが、足回りにはフロントに13インチホイール、リアには左右のサスペンションが新たに設けられています。
さらに駆動系も進化し、ハイパーベルコンシステムを導入。
これはワイドレシオベルコンの変速タイミングを、2段階に変化させることにより、エンジンの中速回転時と高速回転時の伸びを最適化することにつながります。
これにより実用領域から、高速領域へのつながりを改善し、ストレスのない加速とスムーズな走りに貢献するのです。
BA-MF06はフォーサイト搭載のMF04E型の流用活用ですが、エンジンのチューニングも施されており、最高出力は22psにアップされています。
主要諸元 | |
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ホンダ | フォルツァ(MF06) |
原動機型式 | MF04E |
エンジンタイプ | 水冷・4ストローク・OHC・単気筒 |
最高出力 | 22ps(16kw)/7000rpm |
最大トルク | 2.4kg・m(24N・m)/5500rpm |
フロントタイヤサイズ | 110/90-13 55P |
リアタイヤサイズ | 130/70-12 56L |
車体価格 | 539,000円(税別) |
ハイパーベルコンシステムとは?
プーリー内のウェイトローラーは、全部で6個あります。そのうちの3個を、グラム数の違うものに変更します。
円周方向の高さも調整することで、低速から中速時の6個のローラー移動と中速から高速時への3個の移動に変化が生じるのです。
細かいクラス設定
フォルツァの初代モデルは、機能別によりいくつかのモデル設定がなされていました。
例えば上位のSモデルには、ABSとアイドルストップ機能やハイマウントストップランプ、携帯電話の充電に対応する12Vシガーソケットなどが装備。
Xモデルではメッキハンドル、ショートスクリーンが付属し、標準装備としてのハザードスイッチや、2人乗りに必要な収納式ステップなど、魅力的なアイテムも既に完備されていました。
ライバルのマジェスティと比べ車両本体は高めのスタートでしたが、30代からの購入層も多く、フォーサイトとは違う購買層が着実に広がっていったのです。
新たに電子制御されたキャブレーション、つまりフューエルインジェクションを搭載し、燃費と始動性の向上につながっています。
2灯式マルチリフレクター式ヘッドライトの採用により、更なるデュアル化に、また前面ダッシュボード内にDC電源(シガーソケット)が新たに設定されています。
リンク式モノサスペンションも初代に続き装備し、ライジングレート効果を活用しています。
主要諸元 | |
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スズキ | スカイウェイブ250 |
原動機型式 | BA-CJ43A |
エンジンタイプ | 水冷4サイクルOHC単気筒 |
最高出力 | 23ps/7500rpm |
最大トルク | 2.5kg-m/6500rpm |
フロントタイヤサイズ | 110/90-13(55P) |
リアタイヤサイズ | 130/70-13(57P) |
オイル容量 | 交換時1.9L |
車体価格 | 549,000円(税別) |
スカイウエーブをメンテナンスし、毎回感じることがあります。
エンジンオイルの交換時期が遅れてしまったり、レベルゲージチェックもしなかった時(継ぎ足しが必要)、このオイル容量1.9Lはフォルツァやマジェスティに比べ多いですが、逆に安心につながっていると思いました。また、フロントラゲッジスペース内のバッテリー設置も、よく考えられていると感心したものです。
スカイウエーブは、平成28年排出ガス規制への適合が必要とされた前年(2017年)まで販売されていました。
カワサキ初のビッグスクーター
スズキは、スカイウェーブがリファインされる前年の2001年に、カワサキへOEM供給(EPSILON:エプシロン250)をスタートさせます。
これによりカワサキ初のビッグスクーターとなり、2002年モデルから2006年モデルまで、スズキとカワサキの供給体制が続いていました。
エプシロンの車両本体はスズキですが、エンブレムを変更し外観はアグレッシブなカラーリングを活用。外装色などもスカイウエィブとの差別化を図っているところがカワサキらしさが反映されています。
この2社のOEM関係は2007年の販売終了まで継続され、OEMの提携解消により、カワサキは日本国内でのスクーター事業から完全撤退したのです。
2007年5月まで、3年間連続届出台数が1位
初代フォルツァの誕生から約4年、2004年に新たな変速機構とキーレスエントリーを兼ね備え、2代目MF08がデビューしました。
現在、過去においてもフォルツァのラインナップの中で、この2代目フォルツァが1番の売り上げを記録しています。
事実、2004年の販売スタート時から、2007年5月までの3年間連続届出台数1位を記録。
フォルツァは、タイプX・Zの2種に分類され、なかでもタイプZでは、この250CCクラスでは世界初となる、電子制御6速のHONDA Sマチックを搭載しています。
これは、オートマチックでありながらマニュアルミッション車なみにシフトダウンやシフトアップが楽しめるというものです。
また、2輪車では世界初となるHONDAスマートカードキーシステムを採用し、PGM-FIを用いた新設計のエンジンに。フォルツァもフューエルインジェクションを搭載し、燃費と始動性の向上につなげています。
さらにシート下のラゲッジスペースは、62Lもの大容量になりました。また、専用設計のオーディオシステムもオプションにて選択が可能に。
さあ、通勤に活用出来そうなビッグスクーターの候補が出そろいました。スペックの見直しに移ろうと思います。
主要諸元 | |
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ホンダ | フォルツァ |
原動機型式 | BA-MF08 |
エンジンタイプ | 水冷4サイクルOHC単気筒 |
最高出力 | 22ps/7500rpm |
最大トルク | 2.4kg-m/5500rpm |
フロントタイヤサイズ | 110/90-13(55P) |
リアタイヤサイズ | 130/70-12(56L) |
オイル容量 | 交換時0.9L |
車体価格 タイプX | 569,000円(税別) |