水素満タン状態から845マイル(約1360km)を走行
米国トヨタは、2021年10月8日、新型MIRAIが水素満タン状態から845マイル(約1360km)を走行し、ゼロエミッション走行(1回の水素充填での走行距離)でギネス世界記録に認定されたと発表しました。
このギネス世界記録達成と同時に、Ward’s Automotive誌の「10ベストエンジン&推進システム(10Best Engine & Propulsion Systems)ににも選定されています。記録樹立は10月8日ですが、挑戦は8月23日と24日にロスアンジェルスにて行なわれ、開始前の補給はたったの5分間です。
南カリフォルニア周辺を往復し、ギネスワールドレコーズの厳格なルールと記録方法に則って行なわれました。ギネスワールドレコーズの審査員であるマイケル・エンプリック氏は、出発前と帰着後にミライの水素燃料タンクに貼った封印シールを確認しています。
1回5分間の水素の完全充填で南カリフォルニアを往復し、MIRAIは水だけを排出し、152MPGe(Mile Per Galon equivalency)を記録しました。
街中での走行を重視
実際のミライの走行は、低燃費運転のプロであるWayne Gerdesと、副運転手のBob Wingerの2名が担当。
8月23日、トヨタの燃料電池開発グループがあるカリフォルニア州ガーデナのトヨタテクニカルセンター(TTC)を出発。
海沿いを北上してサンタモニカやマリブを走行。その日の夜にTTCに戻った2人は、2回のドライバー交代を行い、水素補給なしで473マイル(約761km)を走っています。
今回使用されたミライと認定証を手にするトヨタモーターノースアメリカのエグゼクティブ・バイス・プレジデントであるボブ・カーター氏
翌日の24日は、ロサンゼルスとオレンジカウンティの間のサンディエゴフリーウェイを中心に、街中での走行を重視し、高速道路では渋滞に巻き込まれたりしながらも、372マイル(約598km)を走り抜けたのです。GPSによって記録された2日間の走行距離の合計は、845マイル(約1360km)に到達しました。
気温は摂氏約18℃〜約28℃の間で走行し、通常の内燃機関車が走った場合、約664ポンド(約301kg)のCO2を排出するのに対し新型ミライは、ミライは一切排出していません。
ギネス世界記録審査員のマイケル・エンプリック氏のコメント
10年間ギネス世界記録の審査員を務めてきましたが、距離にまつわるいくつかの偉業を含め、信じられないような試みに立ち会う機会がありました。
トヨタのミライの無給油走行は、燃料電池電気技術の威力を示すものです。この技術と、トヨタのチームによる設計上の工夫が、歴史的な瞬間をもたらしたのです。
また今回のギネス記録に関する補足として、特定の気象条件や走行条件の下で、ミライの車両性能を最適化するハイパーマイリング(低燃費運転)技術に長けたドライバーが運転したことも、偉業を達成したことの要因の1つでしょう。
大幅な軽量化やボディ剛性の向上
FCV(燃料電池自動車)「MIRAI」がフルモデルチェンジし、2世代目となる新型ミライでは、低重心プラットフォームの「TNGA」をベースとしています。
大幅な軽量化やボディ剛性の向上と、静粛性にこだわった技術を投入することで、高速走行時の静粛性を引き上げ、気持ちの良い走行フィーリングを可能に。
燃料電池システムを一新し、動力性能を大幅に向上させたことにより、トルクフルで力強い加速を生むパワーユニットと、最高速度域までパワーをもたらすモータードライブを搭載。航続距離は従来型に対して約30%伸びており、米国仕様のカタログ上の航続距離は647kmとしています。
最大出力は米国仕様の場合、従来型の114kWから、新型では128kWに12%引き上げられています。高出力・高効率のモーターを新開発し、最大出力182hp、最大トルク30.6kgmを獲得。これにより、40km/hから72km/hまでの中間加速は2.8秒となっています。
酸素と水素の化学反応で大きな電力を生み出せるFCV
災害時の停電など、非常時の電源として新型MIRAIは大きく改善されています。
酸素と水素の化学反応で大きな電力を生み出せるFCVは、「DC外部給電システム」「アクセサリーコンセント(非常時給電システム付)」2種類の給電機能を標準で装備しています。
DC外部給電システムにおいては、緊急時に外部給電器(別売)を接続することにより、大出力の電力を住宅や電気製品に供給可能となっています。外部給電アウトレットはフード下のコンパートメント内に設置され、最大9kWの給電に対応しているのです。
アクセサリーコンセント(非常時給電システム付)は、2か所に備えられたアクセサリーコンセント(AC100V/1500W)で電気製品を利用出来ます。非常時給電システムは、一般家庭(平均400Whの電力を使用する前提)で約4日間の給電に対応しています。