発達障害は遺伝するんでしょうか?

発達障害は遺伝するんでしょうか?

発達障害は遺伝するんでしょうか?

ADHDの遺伝率は80%近く
 ごく最近になり、メディアで耳にするようになった発達障害ADHDという言葉。多くの人の捉え方として、発達障害とは子どもの成長過程で発覚し、療育が必要といったイメージかもしれません。

 

 ところが、発達障害に悩むのは子どもだけではなく、大人の発達障害も存在します。ADHDは、学習や対人関係、それに社会生活に困難を抱えることが多く、ある程度まで成長しなければなかなか障害に気づきにくいのが特徴とも言えるでしょう。

 

 さらに、発達障害ADHDは遺伝することがあるともいわれています。これは両親や兄弟がADHDだからといって、必ず他の家族も発症するわけではありません。

 

 以前より研究が進み、ADHDの遺伝率は80%近くであることがわかってきたようです。発達障害は生まれながらにして、脳に何らかの機能障害があることで発症するのです。こうした発達障害の原因を明確に説明する根拠となるものは現在でもありませんが、原因の一つとして単一の要因ではなく複数の要因が関係しあう可能性が挙げられています。

 

 発達障害には、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、限局性学習症などの多くの障害があり、具体的な症状も様々です。

 

 では、脳の機能障害を引き起こす理由としてはどのようなものがあるのでしょうか?

 

 まず考えられるのが、遺伝的な要因が原因の一部であると推測されているのです。単一の遺伝子が原因ではなく、いくつかの複合的な遺伝的要因と、種々の環境要因が重なることで、相互に影響しあい脳機能の障害が発現するのではないかと捉えられているのです。

 

 実証例として、自閉スペクトラム症に関しては研究からいくつかの関連遺伝子によるものとして報告がされています。

ADHD(注意欠如・多動性障害)とは?

ADHD(注意欠如・多動性障害)とは
 ADHD:Attention-deficit/hyperactivity disorderは、「注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害」とも呼ばれています。

 

  ADHDの行動として、不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(思いつくと行動してしまう)といった症状が見られる障害です。このような症状の現れ方により「不注意優勢に存在」「多動・衝動優勢に存在」「混合して存在」と分類されるのです。

 

 今までは、「注意欠陥・多動性障害」という診断名でしたが、2013年刊行の「DSM-5」内で、「注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害」に変更されました。

 

 特にこのADHDは、不注意、多動性・衝動性が社会的、学業的、職業的活動に悪影響を及ぼす場合に、一定の基準をもって診断されます。

「不注意」
● 忘れ物やなくし物が多い
● 話しかけても聞いていないようにみえる
● すぐに気が散ってしまう
● 約束などを忘れてしまう
● 課題や遊びなどを途中でやめてしまう
● 細かいことを見過ごしてしまう(ケアレスミスが多い)
● 物事をやり遂げることができない

 

「多動性・衝動性」
● 手足をそわそわ動かしている
● じっとしていられない
● 質問が終わる前に答えてしまう
● 授業中に席を離れてしまう
● おしゃべりが過ぎる
● 急に走り出す
● 静かに出来ないなど

 

 こうした注意の欠如や多動性、衝動性の症状が、「それぞれ9項目のうち6項目以上当てはまる」、「6か月以上持続している」「学業に悪影響を及ぼしているかどうか」が、主な基準となっています。

大人の発達障害

うつ病などの二次的な問題も
 これまでの日常生活において、あまり支障がない程度の発達障害を持つ人が、大学進学や就職など今までとは違う環境に置かれたときに、周囲と適合出来ないような状況に加え、本来持っていた発達障害に、うつ病などの二次的な情緒や行動の問題が起きてしまうことがあります。

 

 社会人として就職した会社の業務が、自らの発達障害の特性に不向きであったとき、結果として失敗の連続となり、成功するための体験を積み重ねることができません。

 

 さらに発達障害の特徴として、「周囲の人と上手にコミュニケーションを取ることができない」といった事も含まれています。実際に仕事での失敗をわかりやすく、先輩や上司に相談しアドバイスをもらうことができないのです。

 

 こうした経緯の蓄積や、周囲からの否定的な視線など全体的な面でストレスが溜まり、最終的にうつ病などを発症してしまうことがあります。このような発達障害の二次的な問題から、仕事の継続が難しくなり、会社を辞めることに。結果として転職や失職が繰り返されるのです。

 

大人の発達障害
 大きく分けて三つの傾向

自閉症スペクトラム 自閉症スペクトラムとは、かつて広汎性発達障害と呼ばれていた発達障害の種類の一つで、自閉症、アスペルガー症候群、小児期崩壊性障害、レット症候群、不特定の広汎性発達障害の独立した五つの障害をまとめたものです。

 

 日常的な会話のキャッチポールができない、愛着を示す行動が乏しく、知らない人の中に置かれても平気なように見える点です。

 

また、会話を行う際に表情の変化が乏しかったり、ジェスチャーが少なかったりする点も特徴です。

 

周囲の空気を読むことが苦手なため、雰囲気を壊す発言をしてしまうこともあり、人との関係を上手に築くことが困難な人も多いです。また、柔軟性に欠ける傾向があるため、反復的な点も特徴です。自閉スペクトラムの中心となる症状は、「社会コミュニケーションの障害」と「限定された反復的な行動」の二つです。

 

注意欠如、多動性障害(ADHD)

注意欠如、多動性障害(ADHD)には、不注意、多動性、衝動性の三つの症状があります。

 

不注意とは集中力が続かないため物事に注意を向けることを持続できないことです。この症状が強く表れるタイプの注意欠如、多動性障害(ADHD)の人には、以下の特徴があります。
・ケアレスミスが多い、気が散りやすいため一つの物事に集中することが苦手、自分が興味を持つことや好きな事には積極的に取り組むことができるが集中し過ぎてしまう

 

学習障害(LD)

学習障害(LD)の主な症状は、知的な遅れは見られないものの「読み」、「書き」、「算数(計算)」などのうち、特定の課題の学習が非常に困難である状態のことをいいます。

 

ただ単に国語や算数の成績が悪いといった事を指すわけではありません。
聴覚的または視覚的短期記憶や物事の順番を認識する能力、聞いたものや見たものを処理する能力のアンバランスさが、結果的に「読み」、「書き」、「算数(計算)」の苦手さとして現れるのが学習障害(LD)の特徴です。