民進党の頼清徳副総統が初当選
4年ごとの台湾の総統選挙では、与党である民進党の頼清徳氏が勝利しました。
民進党は中国との距離を置いており、3期連続で政権を担うことになり、与党の頼清徳副総統(64歳)が最大野党の国民党の侯友宜新北市長(66歳)と、台湾民衆党の柯文哲前台北市長(64歳)を破り、初当選しました。
有権者は頼氏が掲げる中台関係の「現状維持」を選びました。中国は中台統一を掲げており、反発しているため、台湾海峡を挟んで緊張が高まる可能性があります。
今回は台湾と中国の関係について調べてみようと思います。
品川駅のホームの女性突き落としは、ベルギーの事件とそっくりだった!?
蔡英文総統が築いてきたアメリカとの連携強化の路線を
1996年に総統選の直接選挙が導入されて以来、同じ政党が3期(1期4年)連続で政権を担うのは初めてです。
台湾の独自性を重視する民進党政権の継続は、「台湾人意識」の定着を示しました。
民進党の頼氏は、2期8年にわたり蔡英文総統が築いてきたアメリカとの連携強化の路線を継承することなどを訴えてきました。
さらに頼氏は、国防力の強化や貿易網の多角化などを通じて現状維持とする構想を提唱し「侵略者の善意に頼らない」と中国の圧力に屈しない姿勢もアピール。こうして有権者の心をつかんだ上、支持層を拡大していき、結果として550万票以上を獲得し、初当選したのです。
羽田空港事故での会見中に笑っていたと話題の平岡成哲航空局長とは?
台湾海峡の中間線を越え
中国は、米台接近に警戒して、22年8月のペロシ米下院議長(当時)の訪台直後に、台湾周辺で大規模な軍事演習を行いました。
また、中国の軍用機が毎日のように台湾海峡の中間線を越えるなど、軍事的な圧力を強めています。
こうした軍事的な圧力に対し頼氏は、米国との安全保障分野などでの関係強化をさらに進め、日本や欧州とも連携を深めて中国に対抗していく考えのようです。
中国のSNS、微博(ウェイボー、Weibo)
日本のLineにあたる中国のSNS、微博(ウェイボー、Weibo)では、選挙制度を否定する書き込みや「独立」志向が強いとし、中国が敵視する与党・民進党を一方的に批判する投稿が目立ち、ネット利用者が民主主義体制に好感を持たないよう情報操作が行われていたようです。
ウェイボーでは13日の朝、投票が始まった後、中国本土では「台湾選挙」というハッシュタグが急上昇し、表示回数は一時的に1億6320万回を記録しています。多くの人々が中台関係の改善を期待する声や、台湾が速やかに「祖国復帰」を求める投稿も見られました。
しかし、このハッシュタグは午前中に削除され、午前9時45分(日本時間の午前10時45分)頃から、同じハッシュタグで検索すると「関連法規により、このトピックの内容は表示されません」というメッセージが表示されるようになりました。
上記画像:2023年11月、SNS上で拡散された画像や動画には、与党・頼清徳氏が野党の主張を支持するかのように話す“あり得ない内容”が。
(フェイクとされる画像 台湾のSNSより)
大ヒット映画『THE FIRST SLAM DUNK』の続編は?動画配信サービスは?
台湾住民はそのアイデンティティーを模索
日本統治のあと台湾に強大な支配力を行使したのが大陸の国民党でした。台湾住民はそのアイデンティティーを中国に「はめこまれて」きたに過ぎません。
しかし李登輝によって開始された民主化の奔流の中で、台湾の台湾化を求めて住民は新しいアイデンティティーを模索し始めたのです。
台湾住民の大陸中国に寄せるアイデンティティーは多分に虚構ではないでしょうか。
台湾の民主化は加速し、「台湾独立」を党綱領に盛り込んだ内省人の政党である民進党が躍進し、2000年春にはついに民進党の陳水扁が李登輝の後を襲って総統に選出された歴史があります。
中国との対話の糸口も模索
頼氏は今後、中国との対話の糸口も模索する考えだが、対立局面の打開は難航が予想されるでしょう。
中国は、頼氏について「戦争リスクをもたらすトラブルメーカーだ」と批判しています。中国が台湾に対して軍事と経済面でどのような揺さぶりをかけてくるのか、今後の動向が注目されます。
頼清徳氏
1959年10月、台北県(現・新北市)生まれ。台湾大学卒、米ハーバード大大学院で修士号を取得。
内科医として勤務後、憲法改正機関「国民大会」(廃止)の国民代表、立法委員(国会議員)、台南市長、行政院長(首相)を歴任。
2020年から副総統にいなり、昨年1月から民進党主席となっていました。
台湾の中央選挙委員会(選管)発表
有権者数は約1950万人 投票率は71・86%
頼氏の得票数は558万6019票
侯氏の467万1021票
柯氏の369万466票