効果はヘロインの50倍、モルヒネの100倍
フェンタニルは、もともとがんの痛み止めなどに使用される薬品で、合成オピオイドの種類です。その効果はヘロインの50倍、モルヒネの100倍と言われています。
米国では18歳から49歳までの人々が銃や自動車事故、その他の原因よりもフェンタニルで死亡する人の方が多いです。
「フェンタニルは、オピオイドという痛み止めの一種ですが、アメリカは『痛み止め社会でもあり』、ドラッグストアに行けば300錠入りのボトルなどが販売されています。
以前はアスピリンがよく使われてきましたが、副作用もあるため、それよりも"体に優しい"とされたオピオイドが登場しました。
しかし、オピオイドは中毒性があるため、中毒患者が急増し、その後は麻薬としても使用されるようになりました。では、このフェンタニルとはどのような薬品なのでしょうか?今回はフェンタニルについて調べてみようと思います。
オピオイドの一種
アメリカでは、違法に製造された「フェンタニル」と呼ばれる薬物の被害が増加し続けています。特に懸念されているのは、鎮痛薬として使用される非常に強力なオピオイドの一種である「フェンタニル」の蔓延です。
年間7万人もの人々がフェンタニルの摂取によって命を落としています。フェンタニルはヘロインの数十倍も強力であり、かつ安価です。販売はメキシコのカルテルによって行われていますが、原料の多くは中国から供給されています。
オピオイドとは、ケシから抽出される自然の有機化合物やそれから作られる化合物の総称です。
2021年、北米においてオピオイドに関連する死亡のほとんどは、違法に製造されたフェンタニルによるものでした。
現在では、フェンタニルやメタンフェタミンなどの合成化合物が違法薬物市場を独占しています。フェンタニルは北米のオピオイド市場に大きな影響を与え、深刻な結果をもたらしています。
医薬品研究の先駆者
ヤンセン博士(1926ー2003年)はベルギーの研究者、薬理学者、開業医であり、精神科領域の基礎治療薬で有名な『ハロペリドール』を開発。
ポール・ヤンセン博士は現代の医薬品研究の巨頭の一人であり、当初は1953年にベルギーの小さな医学研究室からスタートしましたが、わずか4年の間にこの小さな研究所は50人の研究者を抱えるようになりました。1953年にはベルギーでヤンセン・ファーマシューティカ社を設立。
「プログレス・スルー・リサーチ(研究の中から常に進歩)」という開発ポリシーのもとで、10万以上の新しい化合物を合成し、その中から84以上の新薬を提供しました。
その領域には、麻酔、疼痛管理、精神医学、真菌症、消化器など、幅広い分野が含まれており、WHO(世界保健機関)によって選ばれた「エッセンシャル・ドラッグ(必須医薬品)」に5つの品目があります。彼は医薬品開発の巨人として素晴らしい業績を残しています。
ヤンセン博士は、個人名義で100を超える特許を所有し、自著または共著の数は 850を超え、さらに世界中で500回を超える研究発表を行いました。
過去10年間で、薬物使用は23%増加
国連の最新報告書によれば、2021年には全世界で1320万人が注射器を使用して薬物を摂取しました。この数字は予測よりも18%多かったのです。
過去10年間で、薬物使用は23%増加し、2021年には2億9600万人に達しまし た。さらに、薬物使用による疾患を患っている人は45%増加し、約4000万人にも及んでいます。
フェンタニルの流行は、米国内でヘロイン、コカイン、メタンフェタミンなどの違法薬物取引や闇市場の広がりに関連しています。
さらに、2000年代初頭から医師による処方されるオピオイド鎮痛薬への依存症患者が増加してきたことも影響しています。処方薬への依存は、医師の処方が中止されても使用をやめることができず、違法薬物の使用につながる可能性が高まります。
現在、フェンタニルやメタンフェタミンなどの合成化合物が違法薬物市場に出まわり、特にフェンタニルは北米のオピオイド市場を大きく変え、深刻な結果をもたらしているとされています。
ナロキソンの投与量を増やす必要が
フェンタニルを過剰摂取した人を救うには、ナロキソンの投与量を増やす必要があるかもしれません。フェンタニルの過剰摂取は他のオピオイドの過剰摂取と同様に、ナロキソン(ナルカンとも呼ばれます)で元に戻すことができます。
過剰摂取の典型的な兆候は以下の通りです
・意識の失失や倦怠感
・タッチやノイズに反応しない
・呼吸が非常に遅く、浅く、不安定、または停止している
・窒息音やいびきのようなうがい音(「死前喘鳴」とも呼ばれます)
・脈拍が遅く、不安定、またはまったく感じられない
・クラミーな、ブルーまたはパープルの肌色(明るい肌)またはグレー/アッシュの肌色(暗い肌)
フェンタニルは他のオピオイドよりも速く呼吸を止めることができるため、できるだけ早く119に電話することが重要です。フェンタニルを過剰摂取した人を支援している場合、誤ってフェンタニルに触れても過剰摂取にはなりません。
3ミリグラムのフェンタニルが
左側の画像は、約30ミリグラムに相当する致死量のヘロインです。右側は、平均的なサイズの成人男性を殺すのに十分な3ミリグラムのフェンタニルです。
フェンタニルはヘロインの数十倍も強力であり、かつ安価で、オンラインやィーラーから入手できるフェンタニルは、ほとんどの場合、違法に製造されているようです。
As little as 2 milligrams of fentanyl might lead to a fatal overdose.
フェンタニル(Fentanyl の効能または効果
フェンタニル(Fentanyl の効能または効果は以下になります。
○全身麻酔、全身麻酔における鎮痛
○局所麻酔における鎮痛の補助
○激しい疼痛(術後疼痛、癌性疼痛など)に対する鎮痛
総称名フェンタニル
一般名フェンタニルクエン酸塩
欧文一般名Fentanyl Citrate
製剤名フェンタニルクエン酸塩注射液
薬効分類名麻酔用鎮痛剤
薬効分類番号8219
ATCコードN01AH01 N02AB03
KEGG DRUG
D01399 フェンタ報ニルクエン酸塩
商品一覧 米国の商品 相互作用情
処方された錠剤と同じように見えます
フェンタニルは、物質が含まれているかどうかを判断することができないため、味や臭い、明確な外観がありません。フェンタニルが混入された錠剤は、処方された錠剤と同じように見えます。
北米でのここまで影響が広がった背景として、メキシコの麻薬カルテルが米国のオピオイド需要の増加に注目し、ヘロインよりも何十倍も強力で、かつ安価で生産でき利益率の高いフェンタニルの製造と密売を開始したことに始まります。またフェンタニル製造に必要な原料が中国からメキシコに出荷されている事実があります。
2018年の米中首脳会談において、当時のトランプ大統領と習主席の間でフェンタニルの取り締まりに関して合意がなされ、中国はフェンタニル製品の規制を行いました。
しかし、アメリカ麻薬取締局によると、その後も中国からメキシコへフェンタニル製造に必要な原料が出荷され、メキシコで製品化されてアメリカへ流入する事例が報告されています。
2023年6月、アメリカ司法省は中国系企業を起訴しました。彼らはメキシコを経由してアメリカ国内でフェンタニルの製造や販売を行ったとされており、25万人分に相当するおよそ200kgのフェンタニル関連物質を押収しています。